Various – Medicine Ball Caravan (1971)
音楽フェスは常にアーティストと観客の最大のコミュニケーションだった。ウッドストック・フェスの興奮が冷めやらぬ1970年には、ロック・ミュージシャンたちによる華々しいコンサート・ツアーも行われていた。特にGrateful DeadやThe Bandらを擁した『Festival Express』は有名で記録映画も撮影されたが、製作上の金銭的いざこざが生じたために演奏の様子が劇場で上映されることはなかった。
『Medicine Ball Caravan』は69年のウッドストック・フェスを受けてワーナー・ブラザーズが行った、8000マイルにも及ぶアメリカ横断のライブ・ツアーだった。こちらは71年に上映されたものの、興行としては芳しい結果ではなかった。しかし、サントラ盤のレコードには豪華なアーティストたちの珍しい音源が目いっぱい詰め込まれており、一聴の価値が大いにある。
The YoungbloodsによるThe Beatlesカバー「Act Naturally」、Delaney & Bonnieの「Free The People」などスタジオ音源のナンバーも含まれているが、アルバム未収録や絶妙なバージョン違いであったりなど、貴重なテイクといえるものばかりだ。
ライブ音源は熱演にあふれている。ブルースマンB.B. Kingがロック世代のヒッピーたちに向けて歌う愛のメドレーは、いつにも増してギターのルシールのメロディが力強い。Stonegroundの演奏のファンキーさは、『Family Album』にも全く劣らないほどである。興味深いのは初期のAlice Cooperで、ショック・ロックの金字塔「Black Juju」を聴けば、おどろおどろしい世界観に観客が圧倒されている様子が目に浮かんでくるようだ。また、こうしたブルース・ナンバーが中心となる中で、Doug Kershawはケイジャン・フィドルの超絶技巧を見せる。