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Linda Hoyle – Pieces Of Me (1971)

 不世出のジャズ・ロック・バンドAffinityが当時たった一枚のアルバムしか残せなかったのは返す返すも残念なことだが、紅一点のリード・ボーカルLinda Hoyleが70年代にソロ・アルバムを本作しか残さなかったことは、あるいはそれ以上の悲劇だ。『Pieces Of Me』のレコーディング・メンバーにはSoft MachineのKarl Jenkinsを中心に、ギターのChris Spedding、ベースのJeff Clyne、ドラマーJohn Marshallといったプログレの名手を擁しており、レパートリーはお得意のジャズにとどまらず、泥臭いブルースや英国らしい格式に満ちたトラッド風まで何でもありの様相だ。
 社会派の「Backlash Blues」はNina Simoneによるナンバーで歌い方も彼女にインスパイアされているが、イントロで聴かれるSpeddingのギター・プレイは原曲よりも数段カントリー・ブルースに寄っており、中盤のエレキギターはMike Bloomfieldをほうふつとさせる。Laura Nyroの「Lonely Women」が選ばれているのはおそらくHoyle自身の趣向(Affinity時代からNyroの歌はレパートリーに入っていた)だが、アルバムの全体的なサウンドは当時Nucleusとして活躍していたメンバーたちの持ち味が強く出ている。穏やかなオーケストレイションを施した「For My Darling」の直後に、壮絶なハード・ロックである「Pieces Of Me」が流れるのはいかにも70年代のヴァーティゴらしい展開だ。
 後にAffinityは活動を再開し、Hoyleも歌手としてのキャリアを復活させた。また、2015年に発表されたソロ・アルバム「The Fetch」は、彼女の美しい歌声がなおも健在であることを証明している。