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The Incredible Bongo Band – Bongo Rock (1973)

 かつてDJ Kool Hercはフロアをビートで支配するために〈メリーゴーランド〉という手法を編み出した。レコードからドラムのブレイク部分を延々と抜き出すという画期的なアイデアの実践の中で、Michael Vinerによるトラック「Bongo Rock」が取り上げられた。ある種の企画モノに過ぎなかったはずのアルバムが、結果としてヒップホップひいては音楽史上最大級のバタフライ効果(とはいえ「Bongo Rock」自体が当時からヒット作ではあったが)を生みだしたのである。
 MGM社のサントラ制作に携わっていたVinerは、あるB級映画の劇伴のためにパーカッショニストPreston Eppsによる59年の曲「Bongo Rock」のカバー版を含む2曲を提供したのだが、これがシングルとして100万枚以上を売り上げた。アルバム『Bongo Rock』はそれを受けてコンセプトを拡大したLP作品で、「Apache」のようなロックンロールの名曲や、西海岸サイケ・ロックの金字塔「In-A-Gadda-Da-Vida」など幅広いジャンルから材を採っている。
 セッションの中心となるのは当然パーカッションのKing Errissonだが、本作のドラムの大部分を担当しているJim Gordon(!)の貢献も大きい。この二人が「Apache」の中で1分半に及んで繰り広げる純度の高いブレイクは必聴だ。また、凄腕のセッションマンSteve Douglasはアルバムの随所で情熱的なサックス・ソロを聴かせており、特に「Last Bongo In Belgium」は上質でメロディアスなブラス・ロック・ナンバーで、本作が単なるビートだけに特化した作品などでは決してないことの証明でもある。
 本作はMGMの傘下であるプライド・レーベルから出て注目され、翌年には同様のメンバーで『The Return Of』という続編も制作された。Hal Blaineや元The BeatlesのRingo Starrがゲスト参加したこちらもとにかく素晴らしい。ヒップホップにもし教科書があるとするならば、The Incredible Bongo Bandという信じがたいグループはきっと序章で登場するに違いない。