Gary Lewis & The Playboys – She's Just My Style (1966)
ロックの評論家がGary Lewis And The Playboysを攻撃する材料など、きっといくらでも見つけられる。しかし、『She's Just My Style』はアメリカ流の甘くて切ないティーン・ポップと、The BeatlesやThe Kinksの洗礼を受けた後のアート・ロックのサウンドとが絶妙なバランスで配合された、ポップ・ロック黎明期の素晴らしい傑作だ。
『This Diamond Ring』以来続いてきた、ヒット・シングルがアルバムのスタートを切るスタイルは変わらないものの、本作ではThe Beach Boys風のアレンジとコーラスが効いた「She's Just My Style」の直後に、意外なまでに激しくハウス・ロッキンするガレージの名曲「Lies」が続く。さらに、Leon Russellがアレンジを担当した「I Won't Make That Mistake Again」では、同時期のBob Dylanを思わせる嵐のようなオルガンが響き渡っている。こんなことは今までは考えられなかった。
「You've Got To Hide Your Love Away」や「Run For Your Life」は、演奏こそ元のビートル・ソングを忠実になぞっているが、声域が狭いと言われがちだったLewisの声に合ったナンバーが選曲されていることがうかがえる。だがそれよりもっと重要なのは「Heart Full Of Soul」におけるTommy Tripplehornの、耳に突き刺さるギターの歪みだ。これはまさに生まれ変わったThe Playboysのサウンドを象徴するかのように聴こえてくる。
チャートのトップ10の常連だったThe Playboysの黄金期のキャリアを堪能するなら間違いなくシングル集を聴くべきだが、オリジナル・アルバムを選ぶとするならば本作はもってこいの一枚だ。