Eddie Money – Eddie Money (1977)
Eddie Moneyは1977年のレコード・デビューから10年のあいだに、プラチナ認定のアルバムを4枚も発表した。だが彼の即物的なステージ・ネームは、父親と同じ警察官になる人生をドロップ・アウトし、シンガーとして長い下積みを経験した自分自身に向けた皮肉であった。Moneyは天性のハスキー・ボイスと、洗練されたソウルや都会的な感覚に満ちたロックのサウンドをうまく結びつけている。おかげで本作はパンチの効いた曲とほろ苦いバラードが絶妙なバランスで両立した傑作に仕上がった。
Jimmy Lyonのギターがアルバム全体を気持ちよくリードしているのもポイントで、希望を高らかに歌い上げるMoneyのボーカルとよくマッチした「Two Tickets To Paradise」は、Moneyのキャリアを代表する名作になった。かつてThe Beatlesも取り上げたソウル・スタンダードの「You've Really Got A Hold On Me」も、元のイメージをいじくり過ぎないまま、実におしゃれに仕上げる手腕が見事だ。また、ここでの名人Tom Scottのサックス・ソロは絶品で、続く「Wanna Be A Rock 'N' Roll Star」で彼は一転してロックンロール少年らしいMoneyの無邪気さを巧みに演出している。
心に染み入る「Save A Little Room In Your Heart」やハードなサウンドの「Jealousys」も印象的で、前者では断ち切りがたい過去への未練が、後者では未来への不安と奮闘がそれぞれ対照的に描かれている。
『Eddie Money』は彼のアルバムの中でも特にヒットした。聴けば聴くほどデビュー作とは思えない、磨き上げられた一枚であることが分かってくる。