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Bakerloo – Bakerloo (1969)

 ハード・ロックの黎明期に唯一のアルバムを残したBakerlooは、いくつもの重要なプログレッシブ・バンドにつながる人脈の中心に存在する、いわばハブ空港のような立ち位置のグループとして知られる。核となるブルース・ギターを担当するClem Clempsonだけでも、ColosseumやHumble Pie、さらにはDave GreensladeのグループやThe Zombiesのメンバーのソロ作品にも携わっており、関連人物を掘り下げるだけでこのページが埋まってしまうほどだ。
 「Big Bear Ffolly」は曲調こそハードだが、リズム隊のTerry PooleとKeith Bakerが紡ぐ巧みなグルーヴはまさしくジャズのそれだ。また、「Drivin' Bachwards」の曲名は決してスペルミスなどではなく、Clempsonがギターとハープシコードでバロック音楽の構成美を描き出す。興味深いことだが、この曲は奇しくもJethro Tullのバッハ賛歌「Bourrée」と同年の発表と相なっている。その一方でハープ・ブルースの名曲をカバーした「Bring It On Home」では、あまりにも実直なアレンジをもってSonny Boy Williamson IIにリスペクトを寄せたりもしている。
 ラストの15分にも及ぶヘヴィ・ジャム「Son Of Moonshine」はこのバンドの音楽性のまさに集大成で、後半部ではBlack Sabbathのような(バンド・マネージャーのJim Simpsonは初期のSabbathにも関わっていた)リフの中にブルースの常套句ともいえる聴きなれたフレーズがさらりと滑り込んだりもする。しかし、A面のハイライトである「Last Blues」も負けておらず、薄靄のようなサイケデリック・パートと地響きを感じるようなヘヴィ・ロックの見事なコントラストが印象的である。