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The Blue Effect – New Synthesis (1971)
1970年代チェコのジャズ・ロック・シーンにおいては、かのJazz Qに並ぶといっても過言ではないThe Blue Effect (Modrý Efekt)が、ビッグ・バンドを迎えて録音した遠大な野心作。ギタリストRadim Hladíkを中心に結成されたThe Blue Effectは、前身はサイケ・ガレージを標榜するグループだったこともあり、本作におけるバンド・アンサンブルはかつてないほど70年代初期風のハード・ロックに接近したものに仕上がっている。だが、アルバム『New Synthesis (Nová syntéza)』がこれほどまでに個性を光らせている理由は、Kamil Hálaが率いるオーケストラがもたらした、一糸乱れぬスイング・セクションにこそある。
本作の骨組みをなすのは、「Smokestack Lightning」をはじめとする古典のフレーズを下敷きにした、基本に忠実なブルースの数々だ。しかしバンドとオーケストラのコラボは理想のバランスで成立していて、「My Game」にはスパイ映画の音楽のような緊張感が生まれ、一方「Southeast Bound」ではモダン・スイングとドライブする激しいロックが見事に融合している。
14分を超すタイトル・トラックは特に展開の読めない組曲だ。典型的なブルースに始まるこのナンバーは、Vlado Čechのドラムをフィーチャーした打楽器のアンサンブル、静謐なフリー演奏を経てから狂騒のラストへなだれ込んでいく。目の回るようなジャズ絵巻だ。
本作をなすロックとジャズの二大要素は背反することなく、ブルースとスイングがまるで地下茎のように互いをしっかりと繋ぎとめている。当時のチェコ音楽としては実に挑戦的だが、これは無謀なものでは決してなかった。