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Slim Harpo – Sings "Raining In My Heart..." (1961)

 ルイジアナのブルース・シーンで活躍していたHarmonica SlimことJames Mooreは、当時バンド・リーダーだったLightning Slimの紹介で、エクセロ・レーベルの名プロデューサーJay Millerに出会った。57年に初めてのシングルを出したMooreは、レコード・デビューに際して名前を〈Slim Harpo〉と改める。
 Jimmy Reed風のハープと歌唱を基本にしつつ、そこへ南部音楽の感覚をブレンドした彼の独特のスタイルは次第に人気を得ていき、61年にはこのファーストLPが発表された。だがMooreが本格的にリスペクトを集めるのは、The Rolling StonesをはじめとしたUKのR&Bバンドが彼のナンバーをこぞってレパートリーに取り入れるようになってからだ。
 本作に収録された「I'm A King Bee」の放つグルーヴこそが、若きMick Jaggerたちの追い求めた、真にヒップなブルースの姿である。腰が入っていながらレイドバックもしていて、その歌い方にはどこかカントリー風の軽やかさがある。それでいてすべてがクールなのだ。聴き比べるとStonesの素晴らしいコピーぶりにも驚かされる一曲だが、Moore自身も「Snoopin' Around」のようなインスト・ナンバーでは先人Reedのやり方を見事に踏襲しているのがわかるはずである。
 カントリーといえば、タイトル・トラックの「Raining In My Heart」も同様だ。穏やかなバンドのアンサンブルと、間奏で入るセリフの語り、そして恋人にすがる悲痛な歌詞。とかくドロドロとしたものが求められがちなブルース音楽において、Mooreの魅力はこのからっとした雰囲気にこそある。「Buzz Me Baby」ではシンプルなドラムのビートをバックにし、脱力したルイジアナの典型を示す一方、ハイテンポで展開する「Don't Start Cryin' Now」では、最高にかっこいいギターのソロをフィーチャーして聴き手の心をロックする。

ℹ️ 英国のR&BバンドThe Moody Bluesは、本作収録の「Moody Blues」からグループ名を採ったといわれている。