Japan – Gentlemen Take Polaroids (1980)
芸術的な不完全燃焼を起こしていたと思われがちなアリオラ・ハンザ時代のJapanだが、『Gentlemen Take Polaroids』における個性の確立を示す予兆は、いたるところに示されていた。前作『Quiet Life』は、彼らがUKシンセ・ポップの原点に位置づけられるきっかけとなる傑作であり、またシングル「Life In Tokyo」におけるGiorgio Moroderとのコラボは、フロントマンであるDavid Sylvianの作風に大きなインスピレーションをもたらした。
耽美主義は健在だ。不条理で屈折した愛情を描くタイトル・トラックはダンサブルなビートによって華麗に装飾されていく。同名の映画から題を採った「Nightporter」は、対照的にクラシック楽器のメロディを導入したうっとりするようなバラード。コントラバスでフィーチャーされているのはなんとBarry Guyだ。
Japan流のブラック・ミュージックの解釈が冴えた「Swing」は、Mick Karnによる妖しいフレットレス・ベースと、抑制の効いたサックスの対比が、なんともいえない魅力を生み出している。「Methods Of Dance」も忘れがたいトラックで、聴く者はまず壮大なシンセのイントロにわくわくし、マリンバ風のメロディとエキゾチックなコーラスを取り入れた圧倒的なダンス・ビートに酔わされていく。
皮肉なことに、ギターに重きを置かなくなったJapanのポップ・スタイルの確立は、必然的にRob Deanの脱退を引き寄せることになった。Sylvian主導のJapanの音楽性は、81年の傑作『Tin Drum』と置き土産のように残されたライブ盤『Oil On Canvas』によって一旦の完成を見る。