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Chain – Live (1970)

 オーストラリアン・ブルースの雄として知られるChainのファースト・アルバム『Live』は、バンドが最も有名なラインナップになるより前——GenesisのボーカルMatt Taylorが加入する以前——に録音された。この頃のChainにはTaylorの強力な歌とハープはまだ存在しない。Glyn MasonとPhil ManningのふたりがまるでCreamのように激しくかき鳴らすギター、そしてジャジーなエレピからなる濃密で長尺なジャムで構成されている。〈シーザーズ・パレス〉という小さなディスコで録音された演奏には観客とのやりとりなどはほとんど入っておらず、ライブ・フェスの解放感とはまた違った、メンバー同士の間で生まれるひりつくような緊張感が満ちている。
 「The World Is Waiting」は3分を超えるイントロダクションからテンポがドラマチックに移り変わっていくプログレッシブなナンバー。「Black And White」は後のヒット曲「Black And Blue」を思わせるタイトルだが、内容は正反対だ。Barry "Little Goose" HarveyのドラムとBarry "Big Goose" Sullivanのベースは本作中で最もジャズに接近していて、そのグルーヴの上をWarren Morganのピアノがひときわ洒脱に舞い踊る。「Pilgrimage」にはJoni Mitchellの「Woodstock」のようにバンドが初めて音楽フェスに参加した時の印象が、「Gertrude Street Blues」のスローで怒りにまみれたサウンドには地元のストリートに漂う憂鬱な雰囲気が、それぞれ表現されている。
 CDのリイシューには当日のアウトテイクや初期のシングルが追加収録された。中でも「Show Me Home」は、彼らがThe Bandの影響を如実に受けていたことがうかがえる興味深いトラックだ。