Lefty Frizzell – The One And Only Lefty Frizzell (1959)
1947年、未成年のファンと関係を持ったかどで逮捕されたLefty Frizzellは、服役中にその罪をひとり恥じ、妻であるAlice Harperに捧げるための詩作にふけった。この時に生まれたバラード「I Love You A Thousand Ways」は、名曲「If You've Got The Money, I've Got The Time」とともに50年にカントリー・チャートの1位を獲得し、Frizzellを人生のどん底からスターダムへと引き揚げた。
『The One And Only』はFrizzellの50年代のキャリアを総括したLPだが、Jimmie Rodgersから多大な影響を受けた彼にとって、伝統的なカントリー・ボーカリストとしての本領が発揮されているわけではない。とはいえ、収録曲の比類のない内容からして最高傑作といえる一枚なのは確かである。Jim Beckに見出されるきっかけとなった「If You've Got The Money」は、軽快さがあふれる親しみやすいホンキートンクに仕上がっている。Frizzellの深く落ち着いた歌声が映えるのは、やはり「Always Late (With Your Kisses)」や「I Want To Be With You Always」のようなポップなラブソングだ。「Mom And Dad's Waltz」はその名の通り彼の両親への感謝の情を歌った一曲だが、これは出所後のFrizzellが生活や仕事を親身に支えてもらった経験から来ている。
これらの曲は多くが50年代初頭に録音されたもので、実際その後のFrizzellはヒットから遠のいていった。しかし、59年の「Long Black Veil」(The Bandのカバーで世界的に広まった)や63年の「Saginaw, Michigan」は、彼の歌手としての確かな実力を証明している。