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East Of Eden – Mercator Projected (1969)

 1970年にバイオリンを大々的にフィーチャーしたシングル「Jig-A-Jig」をヒットさせたEast Of Edenだが、彼らのサウンドの要はどうやらクラシック楽器の導入そのものではないようだ。Jethro TullのIan Andersonや、Curved AirのDarryl Wayとは異なり、彼らは地理的な要素にこだわる(嘘だと思うならば、LPの裏ジャケットを見てみるのもいいだろう)かのようにラーガ、ジャズ、中東音楽に影響された混沌としたロックを展開している。
 メルカトル図法を意味するアルバムのタイトルにも現れている通り、本作は40分間の壮大な世界旅行だ。北半球を俯瞰する「Northern Hemisphere」やアメリカのダンサーを讃える「Isadora」では、Dave Arbusのバイオリンやフルートが印象的だが、同時にGeoff Nicholsonの発するギター・リフがまるでヘヴィ・メタルのように重いことにも気づかされるはずだ。
 インドや中東方面の趣味をにおわせる「Moth」や「Waterways」は、いずれもエスニックとサイケデリアとの親和性(後者に使われたトイレのSEは議論の余地があるが)を示している。一方、「Centaur Woman」はブルースとジャズの根本に立ち返った、驚くほど実直なジャムだ。本作を彩る要素は非常に多いが、East Of Edenのロックの面を捉えるならば、彼らは紛れもなくハード・ロック・バンドであり、Mitch MitchellとJimi Hendrixのような応酬を聴かせるラストの「In The Stable Of The Sphinx」はその典型でもある。
 彼らがサイケデリックに傾倒した時期は短く、結果的に本作はバンドの持っていた個性や志向が最も幅広く表現されたアルバムとなった。最近のリイシューではThe Byrdsの「Eight Miles High」の興味深いカバーも収録されている。