REO Speedwagon – This Time We Mean It (1975)
Joe Garnettによる挑発的なアール・ヌーヴォー風のジャケットが目を惹く『This Time We Mean It』は、REO SpeedwagonのボーカリストMike Murphy在籍期の最後を飾った一枚だ。当時は彼らもブルースやスワンプの泥臭い美学を漂わせていた時代で、Murphyによる勢いの良いオープニング「Reelin'」や、Eaglesのハード・ロック・カバー「Out Of Control」がシングル・カットされていたが、セールス的には箸にも棒にも掛からなかった。80年代の隆盛を思えばにわかには信じがたいことである。
しかし、7インチの売り上げだけで人気を判断してしまうのは愚かな行為だ。本作には恋の切なさを爽快なサウンドで洗い流す「Candalera」や、アルバムの最後を飾る美しいバラード・ポップの名品「Dream Weaver」が入っている。これらは後のアリーナ・ロックへの変貌の前兆ともとれる要素だが、それはやはりエグゼクティブ・プロデューサーとしてクレジットされているBill Szymczykの手腕によるものだろう。
翌年からバンドにKevin Croninが戻ったことで、彼らのサウンドはより洗練されていった。だが『Hi Infidelity』の大きな成功の土台には、本作のようにじっくりと聴きこみたくなるようなアルバムによる、着実なファンの獲得があったのは間違いない。