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Joe Cocker – Mad Dogs & Englishmen (1970)
誰よりも人間臭く、キャリアにも波が多かったJoe Cockerの最初の絶頂期を捉えた傑作ライブが『Mad Dogs & Englishmen』だ。会場のフィルモアにはChris StaintonをはじめとしたThe Grease Band、そして生粋のアメリカ人シンガーLeon Russellといった総勢20名を超す大所帯が集まり、コンサートの様子は映画として封切られた。サウンドトラックでもある本作はたちまちゴールド・ディスクを獲得している。
大仰なタメやハスキーな声でThe Beatlesのナンバーを歌わせれば、右に出るものなどいない彼だが、コンサートは古き良きR&Bのイントロと「Honky Tonk Women」のカバーから始まる。重厚なサックスはThe Rolling StonesゆかりのプレイヤーであるBobby Keysだ。Cockerのボーカルは、古いポピュラー・ソング「Cry Me A River」でも、フォーク・ソング「Girl From The North Country」のコーラスでもどこかやさぐれているが、Russellのスワンプ色あふれるギターやピアノと絡まれば、たちまち涙を誘う暖かい歌になる。『Mad Dogs & Englishmen』では演奏とボーカル、そしてコーラスに至るまですべてが完璧にかみ合っているのだ。
狂信的なアナログ愛好者でない限りは、追加音源の入った2005年以降の再発盤で本作を楽しむべきだろう。「Something」や「With A Little Help From My Friends」といったThe BeatlesソングはCockerを語るうえでは欠かせない。「The Weight」のゴスペル・バージョンは間違いなく歴代最高のカバーと言える上に、Russellによるスワンプ・ロックの名曲「Hummingbird」も必聴だ。