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Legend – Moonshine (1971)

 ギタリストMickey Juppの率いたLegendは、リラックスしたテンポの心地よいロックンロール・サウンドに、英国らしいフォークのエッセンスを混ぜ込んでパブ・ロックの分野を開拓したパイオニアだ。後進のDr. Feelgoodらがその影響力と偉大さを広めるのに一役も二役も買ってきたにもかかわらず、同ジャンルの歴史を語るうえで彼らの存在を不当に無視しようとするロック研究家は少なくない。
 ベル・レーベルで最初のアルバムを発表した後、活動停止の危機やメンバー・チェンジを乗り越えて、バンドはアート・ロックの名門ヴァーティゴから2枚のLPを出した。最終作となった『Moonshine』は、伝説的ジャケット・デザイナーであるKeefの遊び心が印象的だ。一聴すれば「Another Guy」や「Mother Of My Child」での元Procol HarumのMatthew Fisherによるストリングスのアレンジがまず耳を惹くが、タイトル・トラック「Moonshine」ではゆったりとしながらも実にファンキーなロックを聴かせてくれるし、「The Writer Of Songs」のピアノと情緒のある歌声などは、Help Yourselfのそれを強く意識しているようにも聴こえる。
 「At The Shop」ではカズーのコミカルな音色が演奏に絶妙なゆるみを与えており、一転してラストの「Just Because」ではJuppとMo Withamのスリリングなツイン・ギターの応酬が繰り広げられる。「Captain Cool」や「Shine On My Shoes」など、決して早くないテンポのなか行われるこうした刺激的なセッションの感覚は、一度聴いたらクセになる。
 Legendはセールス的な成功を収めたバンドとは言い難い。だがその影響は、間接的なものを含めれば想像以上に膨大なものとなることは間違いないのだ。