Gerry Mulligan – Night Lights (1963)
Gerry Mulliganの全盛期である50年代のカルテットからはメンツも楽器編成もだいぶ様変わりしてはいるが、『Night Lights』はその親しみやすい内容のおかげで彼のキャリアの中でも特にポピュラーな地位を占める一枚といえる。
Mulliganの昔からのこだわりとして、ピアノレスという独特のフォーマットがよく知られている。しかし本作では、冒頭のタイトル・トラックでなんとMulligan自身がピアノを披露している。サックス以前はピアノとクラリネットを習っていたという彼だが、そのソフィスティケートされたタッチはArt FarmerのトランペットやJim Hallのギターとも実に相性が良く、ジャケットのような都会の夜を思わずにはいられない。
セクステット編成のため各メンバーの見せ場自体はコンパクトになってはいるものの、人気曲の「Morning Of The Carnival」や、Chopinの前奏曲24番を哀愁のあるジャズに仕上げた「Prelude In E Minor」など、クールなバラードの名演が目白押しだ。本作の白眉である「Festival Minor」では、ソロの応酬の後に続く後半のインタープレイが素晴らしく、緊張感に満ちたブロウに合の手を入れるように挟まれるHallのギターなどは、さりげないが実に見事だ。
CDでは「Night Lights」の別バージョンが追加収録されているが、こちらだとさらに興味深いことにMulliganがクラリネットを演奏している。このテイクは65年にライムライト・レーベルから発表されたもので、当時は「The Lonely Night」というタイトルだった。