Joe Henderson – Page One (1963)
1962年にアメリカ陸軍を退役したJoe Hendersonは、ニューヨークでKenny Dorhamとの運命的な出会いを果たす。当時ラテン音楽にインスパイアされていたDorhamは、無名に等しかった彼を63年のアルバム『Una Mas』に起用したのだが、この時の縁は、同年のHendersonの真のデビュー作である『Page One』の中で大きな実を結んでいる。それがDorhamの筆によるラテン・ジャズの大名曲「Blue Bossa」である。
誰もがビバップ、ハードバップから脱却した新たなジャズを求めた時代だったこともあり、楽しげなリズムを湛えたこのナンバーはHendersonの代表曲となった。しかし「Blue Bossa」がジャズ・スタンダードとして深く定着したのは70年代に入ってからのことで、当時アメリカで広く普及した〈リアル・ブック〉と呼ばれる海賊版の楽譜集に収録されたおかげだった。とはいえ、オリジナルである本作の持つ哀愁と軽快さのコントラスト、なんといってもDorhamとHendersonによるホーンの絡みの美しさは代えがたいものがある。
同様にラテン色の強い「Recorda-Me」も印象深いが、アルバムには他にも「Homestretch」のようなストレートなハードバップや、「Jinrikisha」のようなクールな名品が揃っている。驚くべきは、それらのいずれでもHendersonが新人と思えないリーダーシップをもってプレイしていることだ。
もう一つ彼が偉大だったのは、「Blue Bossa」のヒットによるイメージに決して呑み込まれなかったことである。本作以降、新主流派をはじめとしてフュージョンから前衛ジャズに至るまで、Hendersonの持つ顔は非常に多岐にわたっている。