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Cream – Disraeli Gears (1967)

 Creamによるこの傑作は、あくまでスタジオ作品として完成されている。オリジナリティは前作からさらに開花し、サウンドはハード・ロックへと歩を進め、また超有名なロック・スタンダードもここから生まれた。
 「Strange Brew」は30年代の古典ブルースを基に、Felix PappalardiとGail Collinsの夫妻のアイデアを交えリメイクし、Eric Claptonの泣きのギターが当世風に仕上げたナンバー。「Sunshine Of Your Love」はJack Bruceのベースが生むシンプルなメロディが受け入れられ、音楽の歴史に残る名作になった。
 『Disraeli Gears』はサイケデリアの宝庫でもある。ダウナーな「Blue Condition」や「Tales Of Brave Ulysses」では、Ginger Bakerの重厚なドラミングが冴え、特に後者のリフは後のライブ・ジャムにも印象的に取り入れられた。一方で、詩人Pete Brownの不条理主義が極まった「SWLABR」におけるハードな音の質感や、ラーガを取り入れた「Dance The Night Away」の持つアッパーな雰囲気も大きな魅力となっている。耳の肥えたリスナーなら、とりわけストレートなブルース「Take It Back」でさえ、アシッドの影響を受けているのがすぐにわかるだろう。
 本作はCreamの最も有名なアルバムだが、これも彼らの一側面にすぎない。コンサートにおいてはこれらの曲は常に拡大解釈され、レコード通りに演奏されることはほとんどなかった。Claptonはブルースから、BruceとBakerはジャズからと、それぞれの出自からくるギャップこそがグループの音楽の根幹だったからだ。そして、影響力とボリュームを増していく彼らの演奏を後目に、〈ロック音楽は芸術たりえるか〉というテーマの議論が大真面目になされていた。