John Mayall – The Blues Alone (1967)
60年代に華開いた英国ブルースの中でも最も野心的な一枚。『The Blues Alone』が評論家から高く評価されたのは、John MayallがBlues Breakersのリーダーという肩書をいったん下ろし、実に真摯にブルース音楽に向き合っていることが伝わってくるからだ。Mayallのソロ作品である本作は、ギター、ハープ、キーボード、ベースに至るほぼすべての楽器を自ら演奏、オーバーダブして録音された。特に明るい「Sonny Boy Blow」といったインスト・ナンバーを除けば、アルバムの全体にスローで重苦しい雰囲気が満ちており、『The Blues Alone』が決してMayallの器用さを誇示するためだけに作られたアルバムでないことははっきりと分かる。
問題もあった。マルチなMayallでもドラム・パートだけはうまくいかなかったため、当時出会ったばかりだったドラマーのKeef Hartleyを急遽スタジオに呼び出したのである。Hartleyの起用がスムーズに決まったのは、プロデューサーのMike VernonがThe Artwoods時代の彼の腕前をよく知っていたおかげだった。多少コンセプトは崩れたものの、こうして本作はブルースの歴史に刻まれる一枚となった。
所信表明といった面持ちの「Brand New Start」は完全にMayallだけの手で録音された一曲だ。「Broken Wings」は後にAtomic Roosterが強烈なヘヴィ・サイケとして拡大的にアレンジして有名になった。「Catch That Train」ではハープの音で列車を再現しようとしているが、これはブルースにおいては意外と一般的なレトリックでもある。
本作は大手レーベルのデッカではなく、その傘下にあった廉価盤専門のエース・オブ・クラブスから発売された。実験的な試みやスター・ギタリストの不在に及び腰になったのかもしれないが、MayallというブルースマンがBlues Breakers、ひいては英国ブルース界のエースであることは歴史がしっかりと証明している。