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Booker T. & The M.G.s – Green Onions (1962)

 名門スタックス・レーベルの専属バンドだったBooker T. & The M.G.sによる『Green Onions』は、インストR&Bの大名盤だ。そして、同レーベルが誇ったメンフィス・サウンドの上質なショーケースでもある。アメリカ南部のソウル・フードを思い起こさせる青ネギのジャケットには色気のかけらもないが、60年代はそんなアルバムがビルボードのチャートに堂々と登場する素晴らしい時代だった。
 Ray Charlesの名曲「I Got A Woman」は、Booker T. Jonesのオルガンが雄弁なボーカルのように立ちふるまう。「Twist And Shout」は以前にThe Isley Brothersのバージョンがヒットを記録しており、The M.G.sやThe Beatlesは彼らのパワフルさを模範としている。数少ないオリジナル曲である「Green Onions」のミニマルなビートは、黒人音楽におけるグルーヴの完成形のひとつと言っていい。Al Jackson, Jr.によるシンプルなドラム(すべてのサウンドの要は間違いなく彼だ)に乗せてJonesがホットなオルガンを演奏した後、Steve Cropperが突き刺すようにクールなギター・ソロを披露する。この短い曲の中には、プレイヤーのあいだで生まれる緊張が絶妙な塩梅で盛り込まれており、10分超えのモダン・ジャズにも負けない個性のコントラストがしっかりと詰め込まれている。
 しばしば忘れられていることだが、本作でベース・ギターを弾いているのは広く知られたDonald Dunnではなく、The M.G.sの初代ベーシストLewis Steinbergである。彼は次作の『Soul Dressing』までグループで活躍し、「Green Onions」や「Mo' Onions」といった名曲の共作者でもある。