Ahmad Jamal – Chamber Music Of The New Jazz (1956)
Miles Davisのあこがれの存在だったことがいくぶん有名になりすぎてしまったAhmad Jamalだが、それが単なる伝説ではないことは、彼の初期のアルバムを聴けばすぐにわかる。本作はもともと1955年にパロットという小さなレーベルから出ていた作品集で、その後すぐに権利を買い取ったチェスによって、『Chamber Music Of The New Jazz』としてアーゴから発売されポピュラーな存在になった。
本作でJamalはIsrael CrosbyのベースとRay Crawfordのギターをフィーチャーし、Oscar Petersonと同様のピアノ・トリオ・スタイルを実践している。しかしJamalのピアノ自体は、Petersonとは対照的に音の余白を活かしたところに魅力がある。特にCrawfordとの対話のようなプレイの応酬は見事で、「A Foggy Day」や「It Ain't Necessarily So」をはじめとしたスタンダードでは、いぶし銀のアンサンブルの力が発揮されている。
Jamalの生んだオリジナル「New Rhumba」は、パーカッシブなギターのリズムがJamalの持つスイング感覚をうまく引き出した名演だ。後にDavisとGil Evansのコンビによってカバーされたことでも有名だが、むしろ興味深いのはCrosbyの奏でるイントロのベース・ラインが「So What」そっくりなところである。「All Of You」はCole Porterが54年のミュージカルのために書いたナンバーだが、この曲がスタンダードになったのはJamalの慧眼によるものだ。もとがブロードウェイなだけに、いくらでも華やかに振り切ってしまえる曲だが、本作でJamalはあえて適度に抑制したアレンジでプレイしている。MJQのバージョンもこの室内楽的アプローチに倣っており、この曲はクール・ジャズの定番となった。
本作はJamalのキャリアの中でも目立つアルバムではないが、その影響力は見かけよりもはるかに大きいものがある。