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Eric Burdon & The Animals – Winds Of Change (1967)

 The Animalsを1966年に一旦解散したEric Burdonは活動拠点を米国へ移す。メンバーの再編成を経て生まれかわった彼らは、南部の伝統的なR&Bやブルースではなく、当時西海岸で興っていたサイケデリック・ムーブメントに飛びついた。彼らの新たな音楽性をはじめて世間に示したのは、アルバム『Eric Is Here』でも本作でもなく、シングル「When I Was Young」の持つ暗くクールなサウンドだった。新メンバーのJohn Weiderが持つヴァイオリニストとしての素養が大きくフィーチャーされており、新生The Animalsが目指すヴィジョンが明確に描かれているのが伝わってくる。
 『Winds Of Change』には混沌に包まれたサンフランシスコ産のダウナーな雰囲気が満ちているが、同時にきらびやかなラーガ・ロック、そして内省的かつ実験的なポエトリー・リーディングで構成されている。まるで呪術の儀式のような「Paint It, Black」のおどろおどろしいカバーは、長尺になっているものの、無駄をそぎ落としたジャムゆえの緊迫感がある。Burdonは「Yes I'm Experienced」で彼の友人であるJimi Hendrixをストレートに讃え、「San Franciscan Nights」では新天地であるアメリカの社会をわざと大げさに礼賛する。
 アルバムにはJefferson Airplaneのようなウエスト・コースト風の爽やかさはほとんど感じられないが、「Anything」にはフォーク・ロックの持つおだやかな優しさがある。「When I Was Young」でも描かれていた親子の絆というテーマは、この頃からBurdonの詩作にたびたび登場するようになるモチーフだ。また、勢いのある「It's All Meat」やロックの歴史を俯瞰した「Winds Of Change」には、後の「Monterey」に続くようなトリビュート精神を垣間見ることもできる。