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Taste – Live At The Isle Of Wight (1971)

 まるで戦車のようにヘヴィなアンサンブルでブルースを再定義したTasteは、1970年に入る頃にはすでにメンバー間の亀裂が手に負えない状態に陥っていた。その原因の一つは過密なツアー・スケジュールにもあったのだが、彼らの残した2枚の素晴らしいライブ盤が、最も疲弊していたバンド末期の録音であるのは皮肉な事実だ。70年8月に行われたワイト島音楽祭の様子を収めた本作は、ソリッドなRory Gallagherのギター、眼鏡のドラマーJohn WilsonとベーシストRichard McCrackenのリズム隊が信じられないほど息の合った即興プレイを聴かせる、ハード・ロックの傑作中の傑作だ。
 自身に満ちたオープニングの「What's Going On」からして、スタジオ版の2倍近く演奏が引き延ばされているのが分かる。Gallagherの酩酊するようなフィードバック・ノイズに、Wilsonのシンバルが応える。ブギーのリズムで疾走する「Feel So Good」では、McCrackenのスイングするベース・ソロがギターと同じくらいフィーチャーされた。
 スロー・ブルースの「Sugar Mama」と「Catfish」はTasteのパワーを十二分に見せつける名演だ。特に後者のインプロヴァイゼーションは素晴らしい出来で、時にジャズ・バンドのようなメンバー間のコール・アンド・レスポンスを繰り広げながら圧倒的なエンディングを迎える。
 観客の反応はすさまじく、後に発掘された音源にはバンドが何度もアンコールに応える様子が記録されている。しかし、音を聴く限りでは到底信じられないが、3人はバック・ステージではほとんど口を利かない状況だったという。そしてフェスの2か月後に発行されたメロディ・メイカー誌の表紙には〈TASTE SPLIT〉の文字が躍り、バンドの解散が決定したことが伝えられた。