Marty Robbins – Gunfighter Ballads And Trail Songs (1959)
おそらくロックを愛する人間にとってMarty Robbinsは、Elvis Presleyの登場と同時期にカントリーとロックンロールを巧みに結びつけた偉大なシンガーであり、あるいはビデオ・ゲーム世代とっては〈フォールアウト〉シリーズに登場した名曲「Big Iron」を歌った歌手として記憶されている。しかしRobbinsの功績で忘れてはならないのは、1959年のアルバム『Gunfighter Ballads And Trail Songs』のヒットで、ウエスタン音楽におけるアウトローのクールなイメージを広く、かつ鮮烈に与えたことだ。
Robbinsは優れたオリジナルや誰もが知るトラディショナル・ナンバーを織り交ぜながら、古きよき西部の逸話を聴く者に語り掛ける。「Big Iron」は、Robbinsが大口径の銃のフォルムを見たときの強烈な印象と、かつて祖父から聴いた昔話をかけ合わせて生まれた、アウトロー・カントリーの永遠の名曲だ。「El Paso」は愛に殉ずる男を歌ったロマンあふれる一曲で、61年のグラミーではJim Reevesらを抑えて最優秀賞を獲得したナンバーでもある。
「Billy The Kid」は特に古い英雄譚で、「The Strawberry Roan」は戦前から伝わるカウボーイの美学が描かれている。のどかな雰囲気の「Down In The Little Green Valley」でのGrady Martinのギターからも分かるように、バック・バンドの演奏も素晴らしい。決して出しゃばらないが、燃えるような闘志と情熱を感じさせるコーラスもまた見事だ。
続編となるアルバムまでも制作された本作は、Robbinsのキャリアでも特に成功した一枚だ。65年にはゴールド・ディスクとなったことで、『Gunfighter Ballads And Trail Songs』は名実ともにカントリー史上に輝く傑作となった。