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Temperature Of Saying "Hi" – Feel It (2019)

 Temperature Of Saying "Hi"は、数あるK-Popグループの中でも、ジャズ・ピアニストYun Seok-Cheolを中心として結成されたバンドである。前作のフル・アルバム『The Individual Memory Of Love』は、様々なゲストの参加もあり、ドラマのタイアップ曲もありと、とても賑やかな内容が印象的だった。一方、本作はシティ感覚とメロウなサウンドの質感により磨きがかかっている。
 Yunがけだるいボーカルで歌う「If You Tell Me」は、Lee Su-Jinの巧みなギターに彩られた上質なアーバン・ポップだ。前作に収録された「Cruel」の作風を突き詰めたような一曲で、夜景のドライブを描いたシンプルなPVと同様に、サウンドの無駄をそぎ落とした大人な造りになっている。ドラム・パッドとシンガーを兼任するLee So-Wolは、「Days Like These」と「My Heart Is An Ocean」でかわいらしくドリーミーな歌声を聴かせる。
 Yunの美しいピアノ・ソロが堪能できるのはインストの「Rainbow」だ。普段のジャズ作品では時にアグレッシブな個性を見せつける彼だが、本作ではため息の出るようなイージーリスニング・ナンバーに仕上げている。本作唯一のゲスト参加曲である「I'm Okay With Being Alone」は、Samjumohの絹のように柔らかいボーカルをフィーチャーした魅力的なナンバーだ。
 ジャズ・ピアニストがキャリアの傍らで作るシティ・ポップなんて、と思うだろうか?だがこれだけのものが生まれるならば、その寄り道は大歓迎だろう。