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Jimmy Rogers – Chicago Bound (1970)

 偉大な白人ヒルビリー・シンガーとは別人の、というただし書きがついてまわるのは必定だが、シカゴ・ブルースの礎を築いたギタリストJimmy Rogersもまた偉大なミュージシャンである。1940年代にRice Millerのラジオ番組に心酔していたRogersは、同様に彼にあこがれていたLittle WalterとともにMuddy Watersのバンドでモダン・サウンドを追求した。彼らのスタイルはデルタ・ブルースの土壌に都会的なR&Bのエッセンスを加えて発展させたもので、この時期に録音された曲の多くがクラシックとなった。
 本作は主にRocking Fourというバンド名義で発表された50年代のナンバーで構成されており、Willie DixonやFred BelowそしてOtis Spannといった黄金のメンバーが参加した珠玉の内容だ。これだけでアルバムの中身が約束されたようなものだが、そんな中にも「Back Door Friend」におけるEddie Wareのテクニカルなピアノなど、マイナーなミュージシャンが見せる輝きの瞬間がある。
 「That's All Right」はArthur Crudupの同名曲に負けないスタンダードとなった名作だ。歌詞こそ典型的ではあるものの歌い手のソウルが試される一曲で、Rogersは情感たっぷりに歌い上げる。
 タイトル・トラックの「Chicago Bound」の熱は特筆すべきものがある。1954年の1月に録音されたWatersの永遠の名曲「Hoochie Coochie Man」と同じセッションで吹き込まれたこの曲は、Little WalterとRogersのプレイが軽快なシャッフルのリズムの中で混ざり合った、彼らの真骨頂ともいうべきサウンドだ。