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Aerosmith – Get Your Wings (1974)

 サウンドの外連味が注目されるおかげでつい忘れられがちだが、Aerosmithはいつの時代でもハードかつソウルに満ちたロックンロールを信条としてきたバンドだった。彼らの初期のアルバムの多くにはR&Bの古典のカバーが入っており、特に本作の「Train Kept A-Rollin'」が長年ライブで披露されていることからも、それはよくうかがえる。
 『Get Your Wings』はバンドが世界に進出する以前のアルバムではあるものの、彼らのよき理解者となったプロデューサーJack Douglasとの初めての共同作品という意味で重要な一枚だ。ファンキーなリフの「Same Old Song And Dance」はBrecker Brothersのホーンが加わって最高のソウルに仕上がっており、二部構成の展開となった「Train Kept A-Rollin'」は、疑似ライブ風にするためにGeorge Harrisonのライブ・アルバムから観客の声をオーバーダブしている。こうしたアイデアはいずれもDouglasのものだった。
 収録曲にはいずれも初期Aerosmithの良さが凝縮されており、それは前身グループの時代から続くレパートリーである「Woman Of The World」も例外ではない。「S.O.S. (Too Bad)」のタイトなビート、「Lord Of The Thighs」におけるSteven Tylerの歌の底なしの下品さ、そしてしっとりとしたバラード・ナンバー「Seasons Of Wither」で発揮されるJoe Perryのギターの美しさ。ロックンロールが持つあらゆる魅力が、本作ではもはや芸術的ともいえるレベルにまで高められている。
 75年の次作『Toys In The Attic』によってAerosmithは一躍モンスター・バンドに変貌し、同時に多くの人々が本作の魅力に気づいた。発表当時は一枚もヒット・シングルが生まれなかったにもかかわらず、『Get Your Wings』は最終的にトリプル・プラチナの認定を受けている。