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The Tony Williams Lifetime – (Turn It Over) (1970)

 ジャズとエレクトリック・サウンドの融合に誰もが躍起になっていた時代において、Tony Williamsが新たに結成したグループLifetimeは、傑出していたうえにぶっ飛んでいた。その理由にはWilliamsの精神をとり巻く当時の状況が不安定だったこともあるが、特に大きかったのはギターのJohn McLaughlinとオルガンのLarry Youngという初期の編成に、新たに先鋭的なベーシストJack Bruceが加わったことだった。
 以前からお互いに意識しあっていたというWilliamsとBruceは、McLaughlinの紹介ですぐに意気投合しというが、それは本作での濃密な演奏からもよく伝わってくる。二部構成の「To Whom It May Concern」は震えてしまいそうな緊迫感が満ちており、不安定なボーカルをフィーチャーした「This Night This Song」はポスト・パンクのサウンドを10年も先取りしている。
 カバーで他にも印象的なのは、John Coltraneの「Big Nick」での攻撃的なソロの応酬や、Antônio Carlos Jobimの「Once I Loved」をサイケデリックにアレンジしたYoungの手腕などが挙げられる。「Vuelta Abajo」は極めつけのジャズ・ロック・ナンバーで、激昂するようなWilliamsのドラムが圧倒する。
 再発盤のCDではシングルとなった「One Word」が追加された。Bruceの力強いボーカルがフィーチャーされたナンバーで、セールス的には不発に終わったものの、作者でもあるMcLaughlinは後にふたたび取り上げている。1973年のアルバム『Birds Of Fire』を締めくくる「Resolution」の原型となったのはこの曲だ。