Gillan – Mr. Universe (1979)
〈1979年のGillanは猛威をふるうだろう〉。同年7月のマーキー・クラブにおけるIan Gillanのライブをレポートしたメロディ・メイカー誌は、そう言って彼の新バンドの活躍を予言した。そして、数カ月後に発表されたアルバム『Mr. Universe』は、それが間違いでなかったことを証明する気合の入った内容で、登場後すぐに全英チャートの11位に到達した。
この快進撃の前、Ian Gillan Bandは行き詰まっていた。プログレッシブなジャズ・ロックの路線は観客の困惑を呼び、レコード契約もないバンドに、Gillanは少しずつ愛着を失っていった。思い切った彼はバンド名をGillanと改め、大きなメンバー・チェンジとハード・ロックへの回帰という二つの改革の果てにアルバム『Gillan』を録音する。
本作では、英国内で未発表に終わった『Gillan』のレパートリーを元に、さらに改編し直したバンドで再録し、パワフルに生まれ変わらせている。静かなオープニングの「Second Sight」から導入される「Secret Of The Dance」は、新たに加わった旧友Mick Underwood(かつてEpisode SixではGillanとバンド・メイトだった)のドラムがさく裂するヘヴィ・メタルだ。「Dead Of Night」のイントロにおけるJohn McCoyの極太のベースも聴き逃せない。音楽シーンへ宣戦布告を叩きつけるような「Vengeance」や、飲んだくれのロックンロール「Message In A Bottle」では、Bernie Torméのハウス・ロッキンなギターがGillanのシャウトの解放感を何倍にも増幅させる。
キーボードのColin Townsは共作者としてライティングに多大な貢献をしていて、演奏では「She Tears Me Down」には美しく悲しげなムードを、ラストの「Fighting Man」には壮大な物語性をそれぞれもたらしている。
このアルバムを聴いた者はみな、Deep Purple時代の怪物的なボーカリストとしてのGillanを思い出した。しかし、今になって思えばGillanは来たるべきNWOBHMの時代へ向けて耽々と牙を磨いていたのかもしれない。