Frank Sinatra & Count Basie – It Might As Well Be Swing (1964)
Frank Sinatraの歌手としての絶頂期はやはりキャピトル・レーベル時代に軍配が上がるが、Sinatraにとって居心地が良かったのはリプリーズだった。Sinatraが掲げたアーティスト尊重主義は、自身が様々な大物と共演する機会を呼び寄せ、おかげで華やかな共演作品が多く生まれた。本作はSinatraとCount Basieが相まみえた2枚目のLPである。
編曲家には、気鋭のQuincy Jonesに白羽の矢が立った。映画の撮影に追われるSinatraに付き添いながらJonesは楽譜を短期間で書き上げ、結果的に本作はかつてなくポップなアルバムに仕上がった。
あざやかなのは1曲目の「Fly Me To The Moon」だ。抑制の効いた導入で始まるこの曲はもともとワルツ形式だったが、ここではあえて飾り過ぎない粋なサウンドとシンプルな4ビートで(Frankie曰く、Right Tempoで)歌い上げられる。対して「I Believe In You」では一貫したスイングで勢いをつけ、当時の最新ヒッツのひとつだった「More」では美しいストリングスが見事に曲を引きたて、Sinatraならではの世界を作り上げている。
「Hello, Dolly!」は同年のグラミー賞を獲ることになるLouis Armstrongへ捧げる内容になっているが、その歌い方は茶目っ気があふれていてなんとも楽しげだ。だがこれで終わりではない。Sinatraのキャリアを象徴する名曲「The Best Is Yet To Come」は、「Fly Me To The Moon」と同様に本作のバージョンから有名になったのだ。
歌、演奏ともに最高水準を誇るこの傑作は、聴く者を永遠にわくわくさせてくれる。ジャケットにあしらわれた〈Frank - Splank〉というくだらないダジャレはどうかと思うが。