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Jerry Lee Lewis – "Live" At The Star-Club, Hamburg (1964)

 1964年の春、無名時代のThe Nashville Teensと共にドイツのハンブルクの地を踏んだとき、Jerry Lee Lewisは人生の谷間を登りはじめたばかりだった。58年の結婚スキャンダルによってそれまでのミリオン・ヒットから見放されていた彼は、表舞台へのカムバックを虎視眈々と狙っていた。61年のシングル「What'd I Say」は米国30位に食い込んだが、このスマッシュ・ヒットは本作が放つ衝撃の初期微動のようなものだった。
 「Mean Woman Blues」の演奏が始まると同時に、ブレーキの壊れた列車のような勢いで37分間を駆け抜けていく。Lewisのこのスピードについていくのはバンドにとって至難の業だっただろう。「Money」のような曲では、Barry Jenkins(後にThe Animalsのメンバーとなる)の力強いドラムでようやく地に足がついているようなものだ。名曲「What'd I Say」で観客は最高潮を迎えたかに思えるが、Lewisはここぞとばかりに名刺代わりの「Great Balls Of Fire」を歌いだし、熱狂はますます手に負えなくなっていく。一夜限りとなったこのスタークラブでの公演には、あと一歩でバラバラになってしまいそうな程に純粋なロックの激しさが詰め込まれている。
 契約の都合があったためセールス的な成功を掴めたわけではないが、本作のすさまじい演奏は彼のロックンロール時代の最高到達点と呼ぶにふさわしいだろう。マーキュリー・レーベルでは彼のルーツであるカントリー音楽を巧みに吸収し、完成されたサウンドのアルバムを連発して独自の地位を確立していく。