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R.L. Burnside – Too Bad Jim (1994)

 まかり間違っても本作や『Bad Luck City』はR.L. Burnsideのデビュー作などではないが、ファット・ポッサムから発表されたこれらのアルバムによって、彼をはじめとしたミシシッピのブルースマンが脚光を浴びたのは確かな事実だ。Robert Muggeの映画で取り上げられた影響もあってか、丘陵地帯で独自の進化を遂げていたブルース・マンたちは90年代に次々と頭角を現していった。
 単純なコードを延々と繰り返すエレキギターと、ガレージ・ロック的なドラムの音が繰り出すグルーヴは、あらゆる音楽の枠に収まっておらず、どういうわけかこの上なくプリミティヴだ。カントリー・ブルースの定番である「Shake 'Em On Down」は、そういったBurnsideの個性を感じるのに最も適っている。ミニマルなドラムを放つのは、Burnsideの息子のCalvin Jacksonで、彼はCedric Burnsideの父親でもある。「Peaches」や「Goin' Down South」は60年代の録音でも取り上げられていた曲で、両者を聴き比べれば本作の独特なリズムの刻み方やギターのスタイルが、初期からそれほど変化していないこともわかるだろう。
 60年代以降Fred McDowellくらいしか認識されていなかったヒル・カントリー・ブルースの鉱脈が、数十年ぶりにメインストリームに表出した意義は限りなく大きかった。BurnsideやCedell Davisの商業面での成功は、ファット・ポッサムにシーンの主導権を握らせた。そして90年代のガレージ・ブームに並行したブルース・リバイバルに大きな勢いをつけることになる。