Canned Heat – Hallelujah (1969)
前年の1968年に大きなシングル・ヒットを放ったCanned Heatは、69年のビッグ・イベントであるウッドストック・フェスティバルに先行して『Hallelujah』を発表した。彼らはここでブルース・バンドとしての姿勢を改めて世間に示している。戦前ブルースの拡張と、個性に満ちたオリジナル曲、そしてAlan Wilsonのスリリングな歌声をフィーチャーした本作は、彼らがアシッド・ブルースの次のステップへ進みつつあったことを感じさせる。
冒頭の「Same All Over」は、前作『Living The Blues』に満ちていたサイケデリック精神はいったんおき、ストレートに勝負することを宣言するように歌いあげる実にスタンダードな一曲。自身の名前の由来となったTommy Johnsonの名曲「Canned Heat」を取り上げているのも興味深い。古典の巧みなアレンジに続くのは「Sic 'Em Pigs」だ。一見ふざけているようにしか聴こえないかもしれないが、みぞおちに響く硬質でファンキーなビートはまさに驚異である。
Wilsonの本領は「I'm Her Man」での名人級のハープや、スマッシュ・シングルとなった「Time Was」で発揮されている。だが、アルバム中もっともアヴァンギャルドな一曲「Get Off My Back」における強烈なギター・ソロを聴き逃すわけにはいかないだろう。
ウッドストックでは本作から「I'm Her Man」が選ばれたように、彼らはステージではもっぱらブギーを好んで演奏した。翌70年にはヨーロッパでの録音を含む2枚ものライブ・アルバムが発表されたが、これはCanned Heatの実力と人気が、国境を越えて不動のものになりつつあったことの証明だ。