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Suzi Quatro – Quatro (1974)

 60年代の半ばからそのキャリアをスタートさせているベテランのSuzi Quatroは、小柄なベーシストが屈強なバック・バンドを従える鮮烈な印象でまず注目された。そのイメージは、例えば1990年のベスト・アルバム『The Wild One』のアートワークに分かりやすく象徴されている。そしてThe Runawaysをはじめとした多くのフィメール・ロッカーたちが、自ら楽器を手にして彼女が切り拓いた道を続いていった。
 Quatroの最初の全盛期は、アルバムよりも73年と74年の2年間に放った多くのシングル・ヒットに集約されている。セカンドの『Quatro』には「Daytona Demon」は収録されておらず、UKチャートで見事に1位を獲得した「Devil Gate Drive」も同国のプレスからはオミットされているが、本作は彼女の優れたパフォーマンスが詰まったアルバムだ。Len TuckeyのギターやAlastair McKenzieのピアノも要所で存在感を見せる。
 Chinn & Chapmanによる装飾がやや過多なものの、シングル版と比べてだいぶゆったりとした雰囲気のある名曲「The Wild One」に、力強いロックンロール「Keep A Knockin'」が続く。Quatroの真骨頂である雄大なドライブは、「Move It」とRay Charlesがヒットさせた「Hit The Road Jack」のファンキーなカバーで顕著だ。また、Elvis Presleyのナンバー(彼女の初期のアルバムには必ず彼のカバーが入っていた)である「Trouble」の歌い方は、NBCのTVスペシャルのバージョンを否応なく思い出させるが、後半はハードなジャズ風の演奏になだれ込むのが特徴的である。そしてオリジナル曲の「Cat Size」は、内省的で前向きな美しいバラードだ。
 このアルバムは特にオーストラリアでヒットし、チャートの1位を獲得した。2010年には「The Wild One」がThe Runawaysの伝記映画にも使用されたおかげで、Quatro自身も先駆的存在として再びリスペクトされるきっかけになった。