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Dr. John – Gris-Gris (1968)

 優れたセッション・マンとしてすでに名が知られていたMac Rebennackには、ずっと温めていた音楽のアイデアがあった。Sonny & Cherの口利きでスタジオ・レコーディングの機会が舞い込んだのは、彼にとってまさに天の導きだった。19世紀に実在したとされるDr. Johnなる呪術師をコンセプトに、R&Bとニューオーリンズの土着的なリズムを掛け合わせ、そこへジャズやラテンといった様々な材料をぶちこむことで、Rebennackは真にヒップなサウンドを生み出そうとしたのだ。
 ハスキーなRebennackのボーカルにずっしりとしたパーカッションが乗った「Gris-Gris Gumbo Ya Ya」は最高のつかみ●●●だ。フリーキーなサックスやコーラスが妖しいこの曲は、彼らにそのつもりが無くとも、サイケデリックの愛好家にもしっかりと刺さる仕上がりになっている。「Mama Roux」のカリブの暖かい空気を感じさせるビート、「Jump Sturdy」の大仰なリズムとコーラス、そして呪文のような「I Walk On Guilded Splinters」の歌など、アルバムの構成要素はじつに様々だ。また、Steve MannのバンジョーやErnest McLeanのマンドリンといったカントリー系の楽器が巧みに配されているのは隠れた聴きどころのひとつで、「Danse Fambeaux」ではギターよりも強くフィーチャーされる。
 ディキシーの知られざる文化をNYへ紹介したこのLPは、ヒットはしなかったもののカルト的傑作として受け入れられた。アトランティックの重役たちも当初Rebennackたちのやっていたことなど気にも留めていなかったが、レーベルとの契約は70年代の半ばまで続き、結果的にDr. JohnというキャラクターはRebennackの生涯のステージ・ネームとして定着した。