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Geordie Greep – The New Sound (2024)

 Black Midiをあっさりと解散してしまったGeordie Greepは、ドラマーのMorgan Simpsonを含めた数十名のミュージシャン(HMLTDに参加しているSeth Evansのほか、Chicão MontorfanoやFábio Sáといったブラジルのアーティスト)をかき集め、最高に雑食でトガったニュー・アルバムをリリースした。『The New Sound』の看板にいつわりこそないが、女になけなしのプライドを見せつけようとする「Holy, Holy」や、権力と暴力に狂った「Through A War」のように、Greepの毒気はもっぱら前時代的な男性性に向けられているようだ。本作で最も攻撃的なのはサウンドより歌詞であることは間違いなく、特にアルバムに先行して公開された「Holy, Holy」の語り口などは、まるで短編映画を見ている気分になる。
 セッションマンの人選の豊かさがもたらした成果は、「Terra」や「The New Sound」のようなラテンの傑作ナンバーによく表れている。一方で、張り詰めた性急なビートでSleaford Modsのようにがなり立てる「Blues」は、Black Midiから続くSimpsonの面目躍如だ。Evansの渋いボーカルとフリー・ジャズ風味のサックスをフィーチャーした不気味な「Motorbike」は素晴らしくクールだが、どのトラックにおいても物語の主人公たちは常に言いようのない不安にかき立てられている。このうえ、「Walk Up」では拍子はずれなカントリー調でClarence Henryのパロディ(?)まで聴かされるのだから、もうお手上げと言うほかはない。
 ラストで披露されるFrank Sinatraの実直すぎるカバー「If You Are But A Dream」に至る隅々にまで、Greepの痛烈な皮肉を読み取らずにはいられず、何度も聴き返したくなるだろう。とはいえ、日本人にはなじみの深い故 佐伯俊男による大胆なアートワークは、いささか刺激が強すぎるかもしれないが。