Wynn Stewart – It's Such A Pretty World Today (1967)
ムショ帰りの悪童シンガーMerle Haggardが登場するまでは、西海岸のベイカーズフィールドにおけるカントリー・シーンを代表する歌手と言えば、Buck OwensかWynn Stewartの二人と相場が決まっていた。長いキャリアを持ちながらも60年代に入るまでは本格的なアルバム・レコーディングをしてこなかったStewartだが、67年の傑作『It's Such A Pretty World Today』は同名シングルのヒットも相まって、彼にとっては初となる米国カントリー・チャートの1位という栄光をもたらした。
翳りのない喜びを湛えたタイトル・トラック「It's Such A Pretty World Today」は、揚々としたややサイケ風のコーラス・ワークとスティール・ギターをブレンドさせた、カントリー版のサンシャイン・ポップといった趣きである。正統派なカントリー・ソングとして優れているのは、自作の「'Cause I Have You」やお得意の語りをフィーチャーした「The Tourist」で、特に後者は後に自身のバック・バンドの名前にもなったナンバーだ。
「Angels Don't Lie」はシングルとしてはヒットしなかったものの、Stewartの低く温かい歌声が活きた忘れがたいバラードである。「Unfaithful Arms」はStewartの一途な思いが聴く者の胸を打ち、一方アップ・テンポな「Half Way In Love」ではエレキとアコギの演奏の対比が楽しい。
結果的に言えば本作がStewartのキャリアの中で最も売れたアルバムということになる。以降Stewartは70年代の終わりごろまで、大きなヒットとはいかないまでもコンスタントに作品をチャートに送り込むようになった。