Kenny Dorham – 'Round About Midnight At The Cafe Bohemia (1955)
The Jazz Messengersを脱退したKenny Dorhamは、サックスのJ.R. MonteroseとともにThe Jazz Prophetsというグループを結成して新たなスタートを切った。本作はDorhamのリーダー作として発表されたライブ・アルバムだが、実際にはThe Jazz Prophetsとほとんど同じメンバー(ピアニストはDick KatzからBobby Timmonsに変更されている)にギタリストのKenny Burrellを引き入れたメンツで録音され、さまざまなスタイルのハード・バップを実践している。
名曲「Afrodisia」を思わせるようなラテンのイントロで始まる「Monaco」、Miles Davisも取り上げた恍惚のバラード「'Round About Midnight」、そして目まぐるしいテンポで進行する「Hills Edge」。こうした一連の曲は、そのすべてがDorhamのトランぺッターとしての幅広い才能を証明しているかのようだ。1950年代のアルバム群で彼が見せたこの音楽の変遷が、本作に凝縮されているのが分かるだろう。Monteroseは熱すぎないブロウでDorhamのプレイに呼応し、Burrellは時にほれぼれするような速弾きのテクニックで存在感をアピールしている。その一方で、ピアノ・カルテット編成の「Autumn In New York」はTimmonsとのアンサンブルがとても滋味深く、そしてリリカルだ。Timmonsの演奏は実に計算されていて、「A Night In Tunisia」ではファンキーなタッチで自身のもう一つの持ち味を披露している。
ハードさや静けさ、そして異国風の熱気など様々な個性を開花させたDorhamのショーケース的一枚だ。彼の音楽世界への入門にはこれ以上のアルバムはないだろう。