Joe Jones – My Fire!: More Of The Psychedelic Soul Jazz Guitar (1968)
ジャズ界の偉大なドラマーと同じ芸名で活動していたギタリストIvan Joseph Jonesは、1969年のアルバムで演奏した「Boogaloo Joe」のタイトルを自身のあだ名にした。しかし、このふたつ名はひょっとしたらロシア皇帝にちなんだ〈雷帝〉という恐ろしいものになっていたかもしれない。前年に発表の本作に収録された「Ivan The Terrible」も、「Boogaloo Joe」と同じくらい素晴らしいオリジナル曲だからだ。
Jonesの持ち味はソウル・ジャズの熱いビートに乗せた巧みな速弾きで、「Ivan The Terrible」で繰り広げられる実力派のピアニストHarold Mabernとの息を呑むようなアンサンブルも大きな魅力となっている。ロック・クラシックとなった「Light My Fire」は、同年のJosé Felicianoによる穏やかなアレンジとは正反対で、かなり早急な雰囲気を構築している。
「For Big Hal」はMabernの父に捧げられたバラードで、6/8で演奏される「St. James Infirmary」とともに、ブルージーなJonesのプレイに引き込まれる。R&BシンガーLloyd Priceによる同年のシングル曲「Take All」は、リード・シートを用意できなかったために作りこまれたアレンジを施さずに演奏されたが、明るいファンキーさで言えばLPの中でも群を抜いているナンバーだ。
ふたを開けてみれば、タイトルに冠された〈サイケデリック〉の文句は羊頭狗肉と言わざるをえない。本作は全くもって正道の、優れたソウル・ジャズ・アルバムなのだ。