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Chicken Shack – O.K. Ken? (1969)

 John Peelの肉声を用いたささやかな遊び心も含めたうえで、英国ブルースの世界における最も有名、かつスタンダードな立ち位置にある一枚。Stan Webbは現在まで常にブルースの忠実な徒であり続けてきたが、メンバーの変遷に翻弄された彼のグループChicken Shackは、アルバム『O.K. Ken?』の時、音楽的に最も充実した時期を迎えていた。
 オリジナルとカバーを問わず、バンドはアメリカ音楽の伝統に敬意を払っており、たとえば「Tell Me」におけるWebbはChester Burnettの強烈なダミ声を意識している。また、彼は「Fishing In Your River」や「The Right Way Is My Way」のように、ブラス・セクションが印象的なR&B風のオリジナル・ナンバーを作りだす器用さも見せる。紅一点のピアニストChristine McVie(結婚前の彼女は当時Christine Perfectと名乗っていた)も印象的だ。「Get Like You Used To Be」で彼女は味わい深いボーカルも披露しており、そこにゲストのJohnny Almondの名人級のサックスが乗れば言うことなしである。
 シカゴ・ハープの名曲「Mean Old World」で参加したのがShakey Horton、つまりBig Walterというのもなかなかに憎い演出だ。続く「Sweet Sixteen」も説明不要のオールディーズであり、バンドはこのスロー・ブルースを6分にわたって実に丁寧に歌い上げている。
 Perfectは本作発表のあとFleetwood Macに加入。リズム隊のDave BidwellとAndy Silvesterは70年代以降はSavoy Brownの作品に参加するなど、当時のブルース・ブームを担ったグループのあいだでメンバーは散りぢりになる。Chicken Shackは名実ともにWebbのバンドとなり、息の長い活動を続けている。