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Caravan – In The Land Of Grey And Pink (1971)

 英国のジャズ・ロック・バンドCaravanは、同じ前身を持つSoft Machineと同様に、音楽的評価はともかく商業的な成功を掴むことはできなかった。このアルバムはチャートに記録こそされなかったものの、ジャズ・ロックやプログレッシブ・ロックの歴史において外すことのできない名作としてファンに確かに記憶されている。
 オリジナル・メンバーであるDavid Sinclairが参加した最後のアルバムとなった本作だが、その音楽的成功は彼の伸びやかなオルガンのインプロヴァイゼーションによるところが大きい。また、様々なプログレの名曲と同様に、歌詞の内容は幻想的(ところどころ物騒でもあるのはマザーグースのようにも思える)だが、それと同時に牧歌的でどこかのんきだ。画家のAnne Marie Andersonによる印象的なアルバム・ジャケットは、まさしく本作の描く光景を的確に表現した名画といえる。
 名曲「Golf Girl」は英国の伝統的フォークの穏やかさと、ジャズの洒脱なサウンドを融合している。続いて、そこはかとないアシッドの雰囲気を醸すのが「Winter Wine」だ。B面を占める組曲「Nine Feet Underground」はその後のライブでも度々取り上げられるCaravanのキャリアを代表する大作である。『In The Land Of Grey And Pink』はさまざまな音楽要素の集合体だ。一筋縄ではいかない、奇妙だが無邪気なサウンドは多くのプログレ・ファンを引き付けてやまない。しかし、前述のとおりバンドの音楽的ピークを捉えたにもかかわらず売り上げは芳しくなかったため、Sinclairは脱退。ドラマーRobert WyattによるバンドMatching Moleに参加することとなる。