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Photo by
dr_kobaia
Carpenters – Carpenters (1971)
二作目にあたる前年の『Close To You』の成功を受けてか、セルフ・タイトルとなった本作ではCarpentersの持ち味がより強力なかたちで表現されている。初期Carpentersの強みはもっぱら、兄Richard Carpenterの巧みなアレンジと妹Karenの表現力豊かな歌声からなるカバー・ソングの数々で、曲によっては二人のオリジナルと勘違いしそうになるほどだ。
だが、本作で特に有名なナンバーである「Rainy Days And Mondays」は既存の曲ではなかった。Paul WilliamsとRoger Nicholsのコンビによる埋もれたデモ曲を、Richardあてに贈ったことで初めて世に出た名作である。ハーモニカの懐かしげなメロディにはじまるこの歌は、Karenの芯のあるボーカルを活かすためにサウンドにはほどよい抑制が効かされている。「Superstar」はもともとDelaney & Bonnieが歌ったものを、詞も曲も自分たちのテイストに合うよう丁寧にアレンジしたナンバーだ。ここでは原曲にも劣らないKarenのソウルを堪能できる。
アルバムには、他にも注目すべき「For All We Know」(ヒット映画の主題歌)のほか、オリジナル曲としては陽気な「Saturday」や、バロック・ポップ風の趣味が活きた「Druscilla Penny」といった粋な小品が入っている。だが白眉といえるのはCarpentersのソフトな魅力の典型を示す「One Love」、そして5分半にわたってBacharach-Davidにリスペクトを捧げたメドレーである。