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Lesley Duncan – Sing Children Sing (1971)

 Lesley Duncanが1960年代に発表したシングル群は当時十分な評価を受けなかったが、彼女の美しく控えめな歌声と出来のいい楽曲は、今でも多くの人々、とりわけミュージシャンたちに愛されている。Elton JohnはDuncanの腕前を特に買っていた一人で、70年には名曲「Love Song」を彼女のボーカルをつけて録音していた。翌年、Johnはアルバム『Madman Across The Water』の録音していた最中に、Chris SpeddingやRay Cooper、Terry Coxといった信頼のおけるメンバーを引き連れて彼女のアルバムに参戦した。
 Duncanが優しく語りかけるように歌う「Love Song」は、大きなアレンジを加えることなく原曲よりも洗練されたもの(口笛の使い方に注目)に仕上がっている。フォークを出発点にしているがゴスペルもまたDuncanの音楽の重要な要素のひとつだ。ファンキーなロック・チューンの「Help Me Jesus」ではJohnのピアノが高らかに歌うように響きわたり、「Sunshine (Send Them Away)」では当時の夫だったJimmy Horowitzのオルガンを交えたハーモニーが味わえる。女声としては低めのDuncanはJoan Baezのようなハイトーンを聴かせることはないが、「Chain Of Love」は彼女の確かな情熱を感じさせ、「Sing Children Sing」は聴く者をきっと前向きな気分にさせてくれるだろう。
 次作の『Earth Mother』はよりゴスペルに傾倒した作風を聴かせるようになる。だがなおも控えめな彼女は、本作以降もコーラスとして重宝され、Pink Floydのアルバムやロック・オペラ『Jesus Christ Superstar』といった大作主義の作品にもクレジットされるようになった。