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Photo by
dr_kobaia
My Solid Ground – My Solid Ground (1971)
ドイツの名門ベラフォンの傘下として知られるようになるバシラス・レーベルから発表された唯一作。ギターとオルガンを擁した編成から繰り出されるサウンドは初期のDeep Purpleを彷彿とさせ、時代を感じるクセの強いサイケデリック・ロックを奏でる。そこへ、行きすぎたリバーブや執拗な反復といったドイツらしいお国柄を感じさせる様々な表現が掛け合わさり、さらなるヒネリが加わった味わいが生まれている。
13分にわたる「Dirty Yellow Mist」は題名通りのアトモスフェリックな雰囲気、宇宙的な効果、そしてミニマルに徹したエレキ・ギターが印象的な組曲だ。一方で「Flash Part IV」のイントロは一瞬The Kinksかと思ってしまうフレーズが耳を惹くが、そのギターの音色はなかなかにエッジが効いている。「That's You」は本作の中でも最も正統派なハード・ブルースであり、日本語で死刑執行人を表す「The Executioner」は、気だるい調子の呪文のような歌声がそこはかとない酩酊感をただよわせている。謎めいた「"X"」の曲の展開はヴァーティゴ系のプログ・ロックのようだ。アングラ愛好家が喜ぶようなツボをおさえた外連味である。
「Dirty Yellow Mist」のインパクトもあってか、実験色の強いイメージを持たれやすい一枚だ。とはいえ、ブルースにしっかりと根差した感覚を失わないため、クラウト・ロックの諸作の中でも比較的聴きやすい部類と言えるだろう。本作から実に30余年の時を経た2002年には、過去の未発表音源とメンバーのBernhard Rendelによる新録音がコンパイルされたアルバムも発表された。