Del Shannon – Little Town Flirt (1963)
1961年のシングル「Runaway」によって世界中の聴衆に熱狂的に受け入れられたDel Shannonは、60年代の幕開けと重なるようにして登場した。曲の自作はもちろん、プロダクションにも歌い手として積極的に関わっていくという彼のスタイルは、ポップ・ミュージックにおける新たなシンガーソングライターの時代の到来を告げるものでもあった。
「Runaway」がShannonのキャリアで最も重要なのは間違いないが、63年の本作も印象に残る曲の多さで言えば彼のファーストにひけを取らない一枚である。ロック・ファンに限って言えば、Max Crookの嵐のようなキーボードがおとなしくなっているという一点において、多少の物足りなさを感じるかもしれないが。
後にモータウンで辣腕を振るうプロデューサーHarry Balkの存在もあってか、Shannonの初期の作風にはどこかソウルめいた雰囲気がただよっている。「Two Kinds Of Teardrops」は女性コーラスをフィーチャーしたFrankie Valliのようであり、また「Dream Baby」では口当たりこそいいがディープなブギーを披露している。
だがShannonのハスキーで伸びのよいボーカルは「My Wild One」のようなロック・ナンバーでも大いに活きる。当時米国ではまだまだ無名の存在だったThe Beatlesのカバー「From Me To You」が収録されているのは、ひとえにShannonの慧眼だろう。アレンジはオリジナルに忠実ながらもShannonのパワフルな歌声はやはり際立っている。「Little Town Flirt」は心地いいアメリカン・ポップに振り切った一曲で、彼の他の名曲と同様にイギリスやオーストラリアといった国で大ヒットを果たした。