Manfred Mann – The Five Faces Of Manfred Mann (1964)
Manfred MannとMike Huggを中心としたこのグループは、目まぐるしい60年代のUKモッズ・シーンで頭角を現していったが、その理由の一つに彼らの音楽的ルーツがある。元々優れたジャズ・ミュージシャンであった二人は、アルバムの第一作である『The Five Faces Of』のポップなビートのいたるところに洒脱なジャズのエッセンスをちりばめている。
収録曲の多くを占めているR&Bカバーは、いずれも当時ロンドンでもてはやされていたシカゴ・ブルースを元にしている。曲の展開にひねりが加えられた「Smokestack Lightning」をはじめ、「Bring It To Jerome」という一見通好み(Bo Diddleyのファーストのジャケットで見切れているJerome Greenのナンバーだ)のチョイスは、有名曲の数々の中でひときわ光っている。実はこの曲はUKでヒットしたBo Diddleyの数少ないシングルのB面だった。
本作の重要な〈顔〉のひとつが、「Sack O' Woe」や「I'm Your Kingpin」、「Down The Road Apiece」といったソウル・ジャズを押し出したナンバーだ。Mannの手に汗握るピアノのソロに加え、Mike Vickersの熱いサックスが実に気持ちよく響いてくる。シングルとしてヒットした「Without You」は、ポップとジャズを見事に折衷した名曲で、Paul Jonesの渋みのあるボーカルとクールなHuggのヴァイブの対比は今聴いてもセクシーだ。
Mannのキャリアは70年代の重厚なジャズ・プログレッシブ・ロックで急速に拡大していったが、最初期の本作の時点でその萌芽は見られている。