見出し画像

Bunky Green – The Latinization Of Bunky Green (1966)

 研究家肌で好奇心にもあふれていた若き日のBunky Greenは、このカデット・レーベル最終作で、自らのサックスのブラック・フィーリングと南米の熱いリズムを見事に調和させることに成功した。本作はかねてからのラテン・ジャズが陥りがちだった〈リズムだけラテン風でソロは典型的なジャズ〉という演奏に疑問を投げかけている。アメリカ音楽の〈ラテニゼーション〉を定義したGreenは、レコーディングの際にチェンバロ奏者のプレイを意識したというが、「How's Your Mambo?」のようなストレートなナンバーはその好例といえるだろう。この曲ではWillie Negronのコンガや、Antonio Castroによるパーカッシブなピアノのメロディもそれをうまく引き立てる役割を果たしている。
 このレコードにはジャズとラテンはもちろん、R&Bさえも包括した幅広い音楽ファンの心をつかむ多くの魅力があるのだが、その一つにボーカル・グループThe Dellの参加が挙げられる。「Feeling Good」はエフェクトを効かせたGreenの電化サックスの音色が印象的だが、そこに彼らのコーラスが絶妙なソウルの味をもたらしている。
 アルバムは「Do It Like You Feel It」というリズム、ソロ、コーラスのすべてが最高の形でかみ合った一曲で終わる。この後Greenは音楽教育に携わるようになり自身のレコーディングの機会は減ってしまうのだが、70年代のアルバムを聴けば彼のスタイルがフュージョンの時代にも確実に適応していったことはうかがえる。