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Cargoe – Cargoe (1972)

 スタックス・レーベルの御用達として知られるアーデント・スタジオを経営するJohn Fryは、メンフィスの音楽シーンではちょっとした顔だった。スタックスがLAに移転してからスタジオを支えたのは地元で活動するロック・バンドたちで、特に有名になったのはBig Starだが、タルサ出身のCargoeもポップ・ロック史に残る唯一作をここで録音している。Fryとバンドを引き合わせたのは本作のプロデューサーでもあるTerry Manningだった。
 アルバム『Cargoe』には、Big Starに似たいわゆる〈パワー・ポップの王者〉たる明るいハーモニーがある。面白い共通項はホーン・セクションのさりげない使い方で、「Thousand Peoples Song」はファンキーなアンサンブルを厚いサックス・ソロが彩っているが、これはBig Starの「Feel」を聴いた時のあの盛り上がりを思い出さずにはいられない。「Horses And Silver Things」はアコースティック・ギターとしなやかなベース・ラインが調和した、南部風だが洗練されもしたロックだ。
 硬質なリフと手練れのコーラス・ワークも本作の大きな聴きどころとなっている。メリハリの効いた「Time」、かつて自主制作で発表していたシングル「Feel Alright」の再録版など、思わず踊りたくなるようなナンバーが耳と心を惹きつける。
 Big Starほど悲劇的ではないとはいえ、本作も長いあいだ不当に埋もれてきた一枚で、現在ではスタックス関連の名盤としても広く再評価されている。しかし、当時のメンフィスでCargoeは絶大な人気を誇るバンドだったことは記憶にとどめておきたい。プロモーションの失敗が無ければ、歴史は確実に変わっていたはずである。