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Photo by
dr_kobaia
Pete Dello And Friends – Into Your Ears (1971)
1960年代初頭からソングライターとして活躍し、ミュージシャンとしてはHoneybus時代の68年に「I Can't Let Maggie Go」を大ヒットさせたPete Dello。彼はソロ名義ではLPを本作の1枚しか発表しなかったが、童謡にも似たあたたか味のあるそのサウンドは語り草で、英国ポップ・ロックの歴史にしっかりと刻みこまれている。
注目のトラックはHoneybus時代の名曲「Do I Still Figure In Your Life」のリメイクだ。これはJoe CockerやKate Taylorも採り上げたバラードで、シンプルなフォークのサウンドにバロック・ポップの味付けが加わった、時代を感じさせるが同時に鮮やかな仕上がりである。「Harry The Earwig」や「Uptight Basil」には子供番組で流れていても不思議ではない穏やかさがあり、コーラスが心地いい「It's What You've Got」、ほんのりとサイケの香る「I'm A Gambler」はアシッド・フォークの魅力的なショーケースを形成している。特に「Harry The Earwig」はRoger Deanによる奇妙なアートワークにインスピレーションを与えているが、残念ながらこのジャケットは本作のサウンドにふさわしい意匠に仕上がっているとは言い難い。
本作の後Delloは音楽業界を引退したといわれているが、Honeybusのアルバム再発のプロジェクトに参加するなど、散発的に音楽ビジネスに携わっているようである。