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Black Sabbath – Master Of Reality (1971)

 傑作『Paranoid』で全英ナンバーワンを成し遂げ、勢いをつけたBlack Sabbathにはもう恐れるものは何もなかった。本作で歌われるテーマは、ファースト以来の黒魔術趣味や戦争への糾弾にとどまらず、ドラッグや核、支配と革命など多岐にわたっており、ギター・サウンドにも明確な革新がもたらされていた。
 Tony Iommiの咳から始まる大麻ソング「Sweet Leaf」のリフは、シンプルだが真に完成されたもので、これだけでも伝説と呼ぶにふさわしい。そして転調からなだれ込んでいくスピード感に満ちた後半部の展開も、80年代のメタルを直接的に予言したかのようで、こちらも時代を超越した価値がある。
 チューニングを1音半低いC♯に下げたIommiのギターは、よりストナー的な重量級のサウンドを生み出している。「Children Of The Grave」は、前作の「Paranoid」や「War Pigs」を継承するようなサウンドとメッセージ性が通底した名曲だ。バロックを思わせる「Embryo」や「Orchid」のようなアシッド・フォークらしい小品を挟んでいるのも印象的で、アルバムの中に野蛮な狂気と繊細な美が素晴らしいバランスで同居している。
 アメリカでの評価を着実に伸ばした彼らは、『Master Of Reality』で初めてUSチャートのトップ10に食い込んだ。その影響はメタルにとどまらずButthole Surfersのような実験的パンク・バンドにも引用されるなど、ロックの古典、リフの宝庫としての役割を果たし続けている。